松戸市矢切周辺には二つの水にまつわる歴史的建築物がある。
柳原水閘
柳原水閘は江戸川と坂川の合流地点、柳原排水機場と同位置にある。明治37年竣工でちょうど日露戦争の時代だ。
平成になり柳原排水機場が建設され、使用されなくなった模様。レンガはイギリス積みかな?
江戸川との合流点側から。
こちら側にはゲートが設けられている。写真のように本来の坂川の流れからは切り離されてしまった。
脇に取り付けられた銘板。
起工・竣工日や柳原水閘建設に関わった人々の名前が連ねてある。
判読不能な箇所が多いが以下に書き起こしてみた。(・・は判読不明文字)
明治三十六年十二月起工 明治三十七年四月竣工 |
|
設計技師工学士 | 井上二郎 |
工事監督 | 佐々木恒?太郎 |
工事担当 | 鈴木・・太 山田眞?三郎 |
事務員 | 窪田・・達 |
工事委員 | 八木原五右ヱ門 髙橋五郎兵ヱ 酒井市郎右ヱ門 鈴木・・ |
ちょっと怪しい読み取りなので、大きなサイズで色を反転した画像(220KB)も用意しました。
周りにあるプレートなど。
左は近代化産業遺産(平成19年)、右は土木学会選奨土木遺産(平成16年)、他にも松戸市指定文化財にもなっており三冠王?
ちなみにこちらが現在稼動中の柳原排水機場。柳原水閘を意識したデザインになっている。
データ
起工 明治36年(1903年)12月
竣工 明治37年(1904年)4月
材質 |
アーチ部 | 煉瓦造り(野積み) 石造(切り石積み) |
脚部 | 石造り(一部コンクリート補修) |
松戸市指定文化財(平成7年)
土木学会選奨土木遺産(平成16年)
近代化産業遺産(平成19年)
(水閘の銘板と看板「柳原水閘の歴史」より)
栗山配水塔
柳原水閘から東に数百メートル進んだ丘の上に栗山排水塔がある。昭和12年(1937年)竣工。
今でも現役の施設で、栗山浄水場から松戸市と市川市一帯に水を供給している。
なかなかモダーンな設計で、かなり魅力的だと思う。その特徴的な姿は江戸川の河川敷からも眺めることが出来る。
千葉県水道局編「千葉県営水道史」によると戦時中は真っ黒に塗りつぶされていたそうで、上部の換気口あたりに名残が残っているとのこと。ただ、この本の発行は昭和57年なので今でも残っているのかどうかはわからない。
別アングルから。確かに換気口周辺はやや黒ずんでいるが、ただの汚れかもしれない・・・。
栗山排水塔も土木遺産に認定されている。浄水場の門には解説板が取り付けられていた。
データ
竣工 | 昭和12年(1937年)3月 |
構造 | 鉄筋コンクリート造 |
高さ | 31.9m(有効水深 20m) |
内径 | 15m(貯水容量 3,534m3) |
土木学会選奨土木遺産(平成18年)
データは門前に掲示された解説より。
内部に潜入
栗山浄水塔では毎年春ごろに見学会が行われており、建物内部はもちろん塔の上にまで上がることができる。
ヘルメットを着用していざ潜入!右写真は玄関部分の様子。
土木遺産認定プレートや図表類、そして詳細不明の流量計が展示されていた。
階段を上がった先には貯水槽を覗き見できる場所があったが、写真を撮るのに失敗。
水は貯水槽いっぱいに貯まっていた。職員の方いわく日や時間によって水量は変動するとのこと。
塔てっぺんからおおよそ南西を望む。小さいが写真上部中央少し左に写っているのは建設中の新タワー。
こちらは北東。はるか遠くまで見渡せる。こんなに見晴らしが良いなら戦時中は防空監視にも利用されていたのでは?と思う。
おまけ
松戸市小山の坂川に架かる小山橋の下には、明治31年に作られた小山樋門がある。
これも柳原水閘と同じく煉瓦造り。ちょっと歩いているだけでは気付かない。