その1 下準備

アドオン制作の一番最初の部分。下準備です。主に資料集めについて触れています。資料がないとアドオ制作はなかなか難しいです。

対象の選定

まずアドオン制作は作りたいものを決めるところから始まります。制作中のモチベーションを維持するためには、自分の好きなものであったり、ゲーム中あるとうれしいものを作るのが一番なのではないでしょうか。

このページの執筆当時はもうすこし大きい貨物船が欲しかったので、中型貨物船を作ることにしました。そこで知名度も高く資料も揃っているだろう地領丸を制作することにしました。そして最近登場した羊諦丸のアドオンに便乗です。

いや、地領丸って何だよと思うかもしれませんが、南極観測船宗谷の元々の名前です。竣工時は民間商船でした。

地領丸時代の資料はともかく、南極観測船時代の資料は大量にあるはずなので、宗谷をベースに地領丸を仕立ててゆく目論見です。

つぎのページのモデリングの項目では、宗谷の3Dモデルを制作してゆきます。

(以下つぶやき…随分回りくどいことをしようとしていますが、資料上の問題が大きいです。外航向けの大型貨物船は比較的図面資料が揃うのですが、中型以下の貨物船に関しては戦前戦後通じて図面がほとんど見当たりません。まとまって見つかるのは戦標船くらいです。こうした船は中小造船所で建造されているため、あまり表には出てこないのでしょうか。だれか有力な資料を知っている方いたら、教えてください。)

資料の収集

題材を決めたら資料の収集です。資料は多ければ多いほど(=有名なものほど)アドオンを作りやすくなります。

まず諸元と図面を確保しましょう。特に3Dモデルからアドオンを起こす場合、後者の図面はほぼ必須です。

資料の探し方や、参考になりそうな資料リストについては下にだらだら載せているので、暇な人は読んでみてください。

図面はいろいろな図がありますが、とりあえず一般配置図が確保できれば何とかなります。各種線図もあればなおよしです。 図面は用意したらスキャンして画像編集ソフトで加工して使いやすくしておきます。

これから制作してゆく宗谷はさすが戦後復興の象徴なだけあって、図面資料も多く揃っています。今回は「昭和造船史 第二巻」巻末の掲載の図面を利用します。一般配置図だけでなく、正面線図も用意できたので、かなり作りやすいはずです。

図面がないものを作りたいチャレンジャーな人は、似たようなものをベースに改造していったり、写真をしこたま集めて気合でモデルをでっちあげてください。

資料の捜索について

  • 戦前・戦中の商船の諸元に関しては、デジタル化され、誰でも見られる日本汽船名簿を参照しましょう。
  • 戦後の船舶のデータは各種雑誌や、船舶明細書をあたってみましょう。
  • 特定の船舶の図面やデータを探す場合、まず国会図書館のデジタル化資料検索システムで船名を検索するとよいでしょう。国会図書館外でも中身こそ見られませんが、資料の目次は確認することはできます。有名な船の場合、雑誌の特集記事がヒットするはずです。雑誌名と巻・号数を控えましょう。
  • 該当資料が遠隔閲覧可能な場合、地元の図書館で資料の閲覧・複写が可能かもしれません。ただ、図書館によっては複写の質がいまいちだったり、特定個所を拡大して印刷といった細かい指定ができなかったりします。
  • 遠隔閲覧できない資料の閲覧をしたい場合、あるいは現物を手に取りたい場合、資料を所蔵する館を訪ねるしかありません。関東近辺に在住なら、おすすめしたいのが東京海洋大学(旧東京商船大学)の越中島図書館と海事図書館です。殆どの必要資料は両館でカバーできるはずです。
  • 越中島図書館は公立大学の図書館なので、雰囲気もオープンな上、人も多くないので(個人的には)居心地もよいです。閉架図書はカウンターで頼んで出してもらう必要があります(司書の方々手間かけてすみません。)が、国会図書館よりはるかにスムースです。
  • 海事図書館は国会図書館近くにあります。名前の通り専門図書館なので、ちょっと堅い雰囲気かも?入館するだけでも利用カードの発行・提示が必要で、手荷物を預けたりしなければなりません。ただ、一度入れば開架で資料を置いてくれているので、資料を探しやすいです。
  • 国会図書館は手続き等面倒くさいのでおすすめしません。また、デジタル化資料の複写はお手軽ながら現物の複写と比べ品質がやや劣ります。本当にそこにしか資料がない場合利用するのがよいでしょう。

私的資料リスト

  • 日本汽船名簿
    • 500総トン以上の船舶の要目が掲載。
    • 戦前戦中船舶の数値関係はこれで揃う。
    • アジ歴で一般公開。
  • 日本船舶明細書
    • 掲載要目については汽船名簿に劣るが必要十分。
    • 戦後の船舶データを探すならこれ。
    • 国会図書館のデジタル資料化がされているが国会図書館内限定閲覧。遠隔閲覧不可。
  • 日本船舶名鑑
    • 発行期間短い。明細書を簡素にしたものと思われるが満載排水量が掲載。
    • 明細書と違い国会図書館提携館での遠隔閲覧・複写が可能。
  • 船の科学
  • 船舶
  • 世界の艦船
    • 雑誌。もっぱら新造船特集として、図面や要目が掲載。詳しさは記事による。
    • 案の定近年のものは要目が簡素化、図面も載らない傾向。
    • 目次の検索は国会図書館の検索システムが便利。
    • 「船の科学」「船舶」は日本船舶海洋工学会のデジタル造船資料館で全巻公開開始。すばらしい!
    • 「世界の艦船」は国会図書館館内限定、遠隔閲覧不可。
  • 商船建造の歩み
    • 図面写真多数収録。戦前日本の三菱建造有名船は大よそ収録。
  • 鉄道連絡船100年の航跡
    • 連絡船に関する要目は殆どこれで揃う。
    • 図面は有名船の一般配置図がいくつか。
    • 塗装の資料もあり。
    • 読み物としても面白い一冊。
  • 昭和造船史
    • 本編には戦前戦後の代表的な船舶のほか、漁船やその他特殊船のあまり見ないような図面もちらほら。
    • 別冊の日本海軍艦艇図面集は明治~昭和期の戦闘艦艇から補助艦艇まで幅広く図面が掲載。断面図や線図も豊富。公式図の複写なので状態がいまいちなものも。
  • 世界の艦船別冊 日本の客船 (1)1868-1945
  • 世界の艦船別冊 日本の客船(2)1946-1993
    • 外航客船はすべて、内航客船は主要なものを網羅。
    • 写真と主な要目が掲載。さすがに排水量までは記載されてはいない。
    • 図面はないが日本の客船を体系的にまとめた数少ない一冊。ぜひとも手元に置いておきたい。

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